「Web3の活用事例は見つかるけれど、自社の企画に何を取り入れればよいのだろう」
企業名とサービス名だけを並べても、その迷いは残ります。同じNFTでも、会員証として使う場合と地域の体験を届ける場合では、利用者の行動も運営の仕事も違うからです。
私たちOMK編集部が事例を見るときに重視するのは、技術の名前よりも、誰が何をできるようになったのかです。
事例は「導入したもの」からではなく、「利用者が得る価値」から読むと、自社との接点が見えてきます。
この記事では公式資料をもとに、観光の会員制度、地域の体験、企業をまたぐサービスの三つを整理します。発表された計画と現在案内されている仕組みを分けながら、企画へ応用するための比較方法を紹介します。
- 利用者の行動と、技術が担う部分を分けて読む。
- 発表された計画、現在の案内、確認できた成果を区別する。
- 自社の利用場面へ置き換え、検証する問いを一つ決める。
Web3の活用事例を読む前に決めたいこと
課題、利用者の行動、技術の役割を分ける
最初に見るのは、その取り組みが解決しようとする課題です。地域へ繰り返し足を運んでもらうのか、会員に特典を届けるのか、別々のサービスをつなぐのかを読み取ります。
次に、利用者が実際に行うことを追います。会員証を取得する、店舗で画面を見せる、体験に申し込むといった動詞に直すと、仕組みを具体的に理解できます。
そのうえで、NFTやウォレットが担う部分を確かめます。すべての工程にWeb3を使っていると決めつけず、何を記録し、誰が参照するのかを切り分けましょう。
Web3自体の基本から整理したい方は、Web3の基礎を解説した記事も参照してください。
「発表」「提供中」「成果」を同じ意味で使わない
発表資料には、開始予定、実証実験、将来検討する構想が同じページに載ることがあります。書かれた時点と、その記述が示す段階を確認する必要があります。
導入を発表したという事実だけでは、継続利用や売上への効果までは分かりません。自社の提案書へ引用するときも、確認できた範囲に合わせて言葉を選びます。
以下では資料の日付や案内内容を示し、そこから得られる企画上の着眼点を分けて紹介します。
| 見る段階 | 確認する内容 | 企画書での書き方 |
|---|---|---|
| 発表・計画 | 公表日と予定している内容 | 取り組みを発表/実施を予定 |
| 利用案内 | 対象者と実際の手順 | 公式ページで手順を案内 |
| 成果の報告 | 測定期間・対象・比較条件 | 報告で確認できる範囲を記載 |
活用事例1:石岡市観光協会のデジタル会員証
会員であることを店舗の優待につなぐ
石岡市観光協会の「いしおかファンクラブ」は、市外の人に地域の魅力を伝える会員制度です。公式ページでは、2026年4月1日に有料デジタル会員制度へ移行したことが案内されています。[1]
同ページでは、デジタル会員証を使った協賛店の優待や、会員向けの情報・イベント案内が紹介されています。NFTの取得そのものに加え、地域で使う場面が用意されている点に注目できます。
利用方法は、HEXAへログインし、保有NFTから会員証を表示したうえで、保有チェックと店舗選択を行う流れです。
ここから読み取れるのは、発行する仕組みと現場で確認する仕組みを一緒に設計していることです。画面を受け取った後に何をすればよいかが、利用者向けの説明になっています。
自社へ応用するときは、受付側の手順まで描く
会員証の企画を検討するなら、特典を使う人だけでなく、提示を受けるスタッフの動きも考えます。
何を見れば利用できると判断するのか。画面が表示できない場合は誰が対応するのか。対象外の店舗へ来た人には何を案内するのか。確認の場面を具体的に書き出しましょう。
企画担当者が手順を理解していても、すべての現場担当者が同じ知識を持つとは限りません。短い案内と問い合わせ先を用意し、実際の接客時間に収まるかを試します。
効果を確かめるなら、取得者数に加えて、特典を使った人数や再利用の有無を追う設計が考えられます。店舗ごとの集計負担も合わせて確認する必要があります。
会員特典や利用条件を設計する手順は、NFT会員証の企業導入の記事で詳しく整理しています。
活用事例2:JALと博報堂のKOKYO NFT
地域ならではの体験を、関わる入口にする
JALと博報堂は2024年2月5日、地域の関係人口創出を目指す「KOKYO NFT」の実証実験第2弾を発表しました。六つの地域における体験や現実資産のNFT化を示した取り組みです。[2]
この発表を読むときの軸は、NFTという販売形式だけではありません。地域と接点を持つ理由として、どのような体験を用意しようとしていたかに注目します。
自社へ応用する場合も、まず地域やブランドならではの体験を言葉にします。参加した人に何を見て、知って、楽しんでもらうのかが企画の中心です。
その後で、参加資格の確認や案内など、デジタルの仕組みに任せる部分を検討します。技術の採用を先に決めると、体験の魅力を説明する順番が逆になりやすくなります。
取得後の予約、当日対応、継続接点をつなぐ
地域の体験には、日時、定員、集合場所、天候への対応など、実物のサービスとして決めることがあります。
デジタル上で資格を受け取れても、予約先が分からなければ参加にはつながりません。取得画面から当日の受付までを一本の流れとして確認しましょう。
遠方から来る人が対象なら、連絡が届く時期も重要です。直前の案内だけで予定を組めるのか、同行者の条件は分かるのかを利用者の立場で見直します。
継続的な関わりを目指すなら、体験の後にどの情報を届けるかも決めます。次の企画案内を受け取る方法や、地域の活動を知る入口まで考えると、一度きりの販売から先を検討できます。
ここで参照した資料は2024年の実証発表です。現在の販売状況や実証後の成果を示す資料として使うのではなく、体験と参加資格を組み合わせた設計の参考として読みます。
活用事例3:JR東日本の企業共創サービス
一つの企業の中に閉じないサービスを考える
JR東日本は2024年12月10日、ブロックチェーンを基盤とする企業共創サービスと、デジタル資産管理アプリ「JRE WALLET」について発表しました。[3]
資料では利用者の同意によるSuica情報の活用や、企業との連携によって新しい体験価値を生み出す方向性が示されています。アプリのリリースや各企画の予定も記載されています。
企画の参考になるのは、利用者の行動と別のサービスの体験をつなぐ考え方です。一社で提供しきれない価値を、企業間の接続によってどう届けるかという視点で読めます。
この発表に含まれる予定や構想を、そのまま現在実施中の機能一覧として扱わないことも大切です。特定の機能を利用する場合は、現在の公式案内を改めて確認します。
企業をまたぐほど、責任の境界を明確にする
複数企業のサービスをつなぐ企画では、利用者には一続きの体験に見えても、運営側の担当範囲は分かれます。
登録できない場合、特典が表示されない場合、相手側のサービスで利用できない場合。それぞれの窓口を決め、利用者が同じ説明を何度も求められない流れを作ります。
情報を扱う場面では、何をどの目的で共有するのかを具体化します。「連携する」という一語だけで済ませず、必要な情報、同意の場面、解除後の扱いを関係者で整理しましょう。
また、片方の企業が参加を終了した場合の扱いも必要です。利用者に残るものと使えなくなるものを、案内できる状態にしておきます。
企業間の接続には調整の仕事が伴います。技術的につながるかだけでなく、運営を続けるために誰が何を受け持つかまで含めて比較することが欠かせません。

作成:OMK編集部。本文の確認項目を整理。
三つの事例を自社の企画へ置き換える比較軸
同じ業種よりも、同じ利用場面を探す
観光の事例でも、資格を確認して特典を渡す流れは、別の業種の会員施策を考える参考になります。
反対に同じ業種であっても、利用者の年齢、来店頻度、現場の対応人数が違えば、同じ手順が合うとは限りません。
自社と近いのは、誰が、いつ、どこで、どの操作をする事例なのか。その条件を比べると、取り入れられる部分と調整が必要な部分を分けやすくなります。
成果指標を利用者の行動に合わせる
会員証を配る企画と体験への参加を促す企画では、最終的に確かめたい行動が異なります。
前者なら特典の利用、後者なら申し込みから参加までの完了など、企画の目的に近い行動を指標にします。登録や配布の数だけでは、体験が届いたかを判断しきれません。
同時に運営側の負担も記録します。一件の問い合わせに要した時間や、現場での手動確認の回数が分かると、拡大時に必要な体制を考えられます。
| 企画の型 | 主に確かめたい行動 | 運営側で見ること |
|---|---|---|
| 会員の優待 | 取得後の特典利用・再利用 | 受付時間と確認手順 |
| 地域の体験 | 申し込み・参加・継続接点 | 予約対応と現地の体制 |
| 企業間連携 | 接続後のサービス利用 | 窓口と情報の受け渡し |
Web3を使わない方法とも比較する
共通の記録を別の運営者が参照する必要があるなら、その必要性を具体的な場面で説明します。一方、自社の会員システムだけで課題を解決できる可能性も確認します。
比較するのは技術の新しさではなく、同じ体験を届けるための操作、費用、運営のしやすさです。
利用者が増えたときだけでなく、少人数だった場合の負担も考えます。参加者が少なくても発生する管理や問い合わせの仕事があるためです。
参考事例と同じ仕組みを採用することより、自社の利用場面に合う理由を説明できることが重要です。
事例を読んだ後に作る、一枚の企画メモ
誰がどこで何をする企画かを、一文にします。
いまの方法の不便と、新しい方法で変わる部分を比べます。
期待する行動と、それを観察する手順を決めます。
対象者、期間、担当者、見直す日を揃えます。
企画メモでは、確認した事実と自社の仮説を別の欄にします。発表されたサービスの説明と、自社で期待する効果が混ざるのを防ぐためです。
たとえば「店舗で資格を確認する手順が案内されている」は事例から確認した事実です。「自社でも受付時間を短くできそうだ」は、これから試す仮説になります。
仮説には確かめる方法を添えます。現場担当者に手順を見てもらう、数名で利用の流れを試すなど、次の行動まで書くと調査が企画につながります。
資料のURLと確認日も残しましょう。後から案内が更新された場合に、どの時点の情報で判断したかをたどれます。

作成:OMK編集部。本文の確認項目を整理。
Web3の活用事例でよくある疑問
- 大企業の事例は小規模な事業でも参考になりますか?
-
事業規模そのものより、資格の提示や体験の予約など、共通する利用場面を探すと参考にできます。対応人数や費用など、自社で異なる条件は別に検討します。
- NFTを使えば、会員の継続利用が増えますか?
-
発行する仕組みだけでは判断できません。利用者が受け取る価値、特典を使う手順、継続的な案内を設計し、実際の利用を確認します。
- 発表資料に成果の数字がないときはどう扱いますか?
-
確認できる導入内容や計画として紹介します。売上や再訪への効果は推定せず、自社で検証する項目として分けて記載します。
まとめ:仕組みの名前より、利用される場面を持ち帰る
石岡市観光協会の会員制度、KOKYO NFTの実証発表、JR東日本の企業共創サービスには、それぞれ異なる利用場面があります。
会員の優待、地域との接点、企業をまたぐ体験という目的から読むことで、自社で検討すべき手順や役割が見えてきます。
最初の一歩は、参考にする事例を一つ選び、利用者の行動を順番に書くことです。その横に自社の現状を並べ、どの不便を変えたいかを一つ決めてみてください。
OMKへのご相談では、検討中の利用場面と現在の課題をお問い合わせフォームからお知らせください。
参考資料
出典確認日:2026年10月5日
